ワンダーフォーゲル2016年4月号がアウトドア派を引きつける理由とは





 

全体概要

映画の公開に合わせて、V6の岡田准一さんが表紙を飾っている。ほかに、「ランドネ」「ビーパル」なども岡田さんが表紙に出ていた。
特集は「山登りプランニング入門」。他力本願から脱却し、自分で山行計画を考えましょうというもの。タレントの女性が山岳ライターの西野淑子さんに師事して計画の立て方を学び、実践する。他に、春の新作ギアの紹介やモテる山男になる!という特別企画もあり。付録は、Style Sample。昨年の夏に上高地で撮影した一般客の皆さんのポートレートが、ソロ、カップル、ガイド、グループなどに分かれて収載されている。

ページ順に寸評を加える

P13 Wangel Goods 02 ⇒新作を学んだ

カリマーのリッジ30がリニューアルされるらしい。「先代よりもボトム部分を絞り、開口部を広げたデザイン」。これにより荷物の出し入れがしやすくなり、重心を上部に作りやすくなった。

P14-15 岡田准一さんインタビュー ⇒中身のないインタビューだった

特に中身のないインタビュー。撮影の日を追うごとに、阿部寛さんが山屋に変貌していったのがすごかったと岡田さん。確かに映画の中での阿部さんの演技は鬼気迫るものがあった。逆に岡田さんは…。岡田さんは、雑誌の中でモンベルのウェアを着ているが(映画でもモンベル)、彼のような洗練された若者は、モンベルが似合わない。

折込広告(マウンテンハードウェア) ⇒意外に面白い企画だった

マウンテンハードウェアの「What’s Outdry」という企画広告が入っていた。アウトドライが商品名なのか、単なる機能のことを言っているのはいまいち判然としなかったが、防水透湿機能を持った同社のザックを紹介していた。水をはじき、ザックの内部に水を侵入させない構造。これなら、ザックカバーがいらないってことか?裏面は、同社の商品を中心にアルプス1泊2泊の持ち物が紹介されていた。

特集 山登りプランニング入門 ⇒ビギナーでも知ってるレベルの情報

「山を知る」「計画を立てる」「春からのおすすすめ山カタログ」の三部構成。タレントの石原あつ美さんが、初学者として、実際にプランニングを行う。
「山を知る」は、情報がごちゃごちゃしすぎていて、読む気が失せた。各山域の名所案内は、ライターやガイドがそれぞれにコメントを寄せていたが、これもごちゃごちゃしていて読む気が起きない。ライターたちによる「文字文字」の山の紹介は不要。ほかに、「信仰」「花の紹介」なども、一応入れておきましたという編集者の意図が透けて見えて、そろそろそういう編集は止めようようよとしか言えない。

「計画を立てる」は、詳細な内容で、ビギナーにはあるいは有益な情報かもしれない。ただ、帰宅時のバスの時間を調べたり、天気予報を調べたり、一度でも山行計画を立てたことがある人にとっては、「常識」すぎるので、本当のビギナー向けの情報といった感じ。

「春からのおすすめ山カタログ」は、特段ためになる情報はない。

P46 田中陽希さんのインタビュー ⇒計画はエクセルで表にまとめる

グレートトラバースの田中さん。とにかく、計画を入念に立てるという。その際は、エクセルを使い倒すらしい。文中で、ひたすらエクセルを連呼していたのが笑えた。田中さんの実際の性格は知らないが、万人に好かれそうなのが垣間見えるインタビュー。

第2特集 このギアがすごい! ⇒ぜんぜんすごくなかった

春夏の最新アイテムを、ガイドやトレイルハイカーが紹介する企画。最初の方のページで、ノースやコロンビアが紹介されていたので、少し萎えた。20ページぐらいの紙幅を割いていたが、正直気になるギアは皆無だった。

P92 GEAR LABO「グレゴリー ズール35」 ⇒良さげなザック

高橋庄太郎さんによる、グレゴリー「ズール35」のレビュー。昨年まで「Z」という商品名だったグレゴリーの名作が、「ズール」に名前を変えて設計が一新された。荷室を湾曲させつつ、背面にメッシュパネル使ったタイプ。グレゴリーの背負い心地は良い。さらに進化したのなら、試してみたい。

特別企画 モテる山男になる! ⇒無内容

清々しいまでに空疎な企画。文章はライターの遠藤裕美さんと編集部が書いている。この手の企画でよくあるように、とてもステロタイプで雑な山男像を描いている。男性読者はみじんも共感しないであろう。扉のこぎたいないおじさんのイラストが悪意を持って書かれている。これがこぎたいない勘違いの山ガール(45歳)を描いていたとしたら、世の中の女性登山者は差別だとわめくだろうが、男性ならば許されると考えているらしいワンダーフォーゲルの編集部は浅薄といわざるを得ない。ちなみに、嫌われる男性とは、「騒々しい人」「たちションする人」「山頂で喫煙する人」「自慢話する人」だそうだ。山男でなくても、そんな人は嫌われるだろう。別に男性でなくても、「騒々しい女性」「喫煙する女性」「自慢屋の女性」も同様に嫌われる。ションベンに関して言えば、生理現象なのだから仕方ないだろう。
理想的な山男のアンケート結果も掲載されている。山野井泰史さん、高橋庄太郎さん、野口健さん、植村直己さん、花谷泰広さん、島崎三歩(「岳」主人公)など、一級の登山家か芸能人か有名人か架空の存在などだ。ほかに、「爽やかな人」「気は優しくて、力持ち」「料理を手早く作ってくれると嬉しい」など。もはや山男など関係ない。好きな男性のタイプを答えているとしか言えない。

付録 Style Sample in 上高地 ⇒これは必見

正直本誌よりもこの小冊子の方が見応えがあった。昨年8/15-16に上高地でスナップした42組のスタイルを収録。スタイリッシュな若者や武骨なベテラン勢、無駄に大きなザックを背負うキラキラした山岳部員、普段着過ぎる男の子、偶然通りかかったモンベル会長のたっつぁんなど。パラパラ見ているだけで面白い。

たとえば33歳女性は、フーディニ、アークなどで、お洒落にきめている。職業をみると「看護師」とある。なるほど、高価なウェアを買うだけのお金があるのだなと得心がいく。ULハイカーのスタイルは、基本ショーツだ。北アルプスの山行で剥き出しの生足を出していいものか迷っている登山者は、これを見たらむしろ生足での山行がダメな理由などないと勇気づけられるだろう。カップル編のスナップを見ると、恋人との山登りをうらやましく思う。パーティもまたいい。男性2人組の写真からは、二人の絆のようなものが伝わってくる。おじさんたちのスタイルもいい。家族もいい。皆独自のスタイルで、うまく着こなしている。ウェアに着られている人など一人もいない。写真・文章の三田正明氏もいい。掲載されている小文「上高地の夏」が良かった。たっつぁんもいい。モンベル会長辰野勇氏だ。たまたま社員と上高地に来ていたらしい。登山歴の欄には、ほかの人は「3年」「5年」など年数が記載されているのに、たっつぁんは、「長いです」の一言。ウェアも、シャツ、パンツ、シューズ、ザック、すべて「モンベル」だ。ファストパッキングの人たちもいい。無表情で仁王立ちしている34歳会社員からは、不思議なオーラが漂っている。クレッタルムーセン好きの44歳女性もいい。和菓子屋勤務の32歳男性もいい。すべていい。この冊子はいい。

総評

付録がいいので、「買い」です





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