山岳レベルガイドライン2017年改訂版





山岳能力検定協会はこのほど最新の「山岳レベルガイドライン2017年改訂版」を発表した。
前回2015年改訂版から大きな変更は加えられていないが、昇級の特例事項に「ボルダリング歴」や「装備品・ギアについて」の項目が付け加えられた。
東京五輪・パラリンピックに新種目として加えられたスポーツクライミングは若者を中心に競技人口が広がり、登山との親和性も高いことから、昇級項目の一つにボルダリング歴が加わった。また、装備品やギアについても、メーカー各社がさまざまな商品を発表しており、実際に装備品として使用していることに加え、素材や商品名、特徴などについての知識を有していることも、今回の改訂版では重要な評価項目として付け加えられた。
2017年改訂版の抜粋は下記の通り。

6級

【登山回数】

1回以上

【登山的特徴】

いままでに一度でも登山をしたことがある登山者には6級が与えられる。ピークを踏んだか否かは問わない。山域、標高、季節も問わない。また幼児の頃に大人に背負われて、山登りに連れて行かれた登山者も6級取得の資格がある。

5級

【登山回数】

2回以上

【特徴】

登山の基本である「挨拶」をきちんと行えるかが、もっとも問われる。パーティで山行する場合、集合場所での「おはようございます」から、目上の人に対して、「よろしくお願いします」と気持ちいい挨拶を行える必要がある。山行中に、すれ違いざまに「こんにちは」といえれば5級の資格が取得できる。

4級

【登山回数】

5回以上

【登山的特徴】

・登山歴5回以上でピークを踏んだかどうかは問わない(基本的に登山は山頂を目指すものと考えられがちだが、登山レベルとピークハントに相関性はない。登山愛好家の中には逆に登山はピークを目指すものでないと断言する者もいる。60歳以上のかつてピークを目指す山を楽しみ、現在加齢で高山に行けない元ワンゲル部出身の登山者がいいわけがましく、上記のようなピークハンター批判を行う場合がある)。
・多くの登山者は友人や家族に誘われ、最初の1回か2回は登山に出かけるがその後続かないことが多い。そのため、6級、5級の登山者の数が最も多い。山行5回以上になると、多くの場合数百メートルの低山から1500メートル級の中程度の山(関東で言えば奥多摩、丹沢山系)を歩くことになる。通常4級あたりから、「山好き」になり、山が趣味になる一歩手前といえる。

【装備的特徴】

・シューズは15000円程度のミッドカットモデルで、モンベル愛好者が多い。
・ウェアもモンベルが多いが、マーモットやミズノ、コロンビアなどインターネットで人気の廉価品かつ機能性を十分に満たしているものを着用している。
・装備はエルブレスなどの郊外に出店している量販店かモンベル直営店で購入している。
・若者の中には普段の運動着や運動靴などを着用している者もいる。通常、登山は専門の用具を身につけるが、近年は道具の多くがオーバースペックであるといえるため、日帰り程度ならば特に体力に自信のある若者ならば軽装でも問題ない。その場合も食料と水、雨合羽(100均可)は最低限携行したい。

【特例措置】

・レインウェアなどの素材に異常に詳しい者は4級を取得できる。
・ 週に1回以上、年に60回以上アウトドアショップに出かける者は4級を取得できる。商品の購入の有無は問わない。

3級

【登山回数】

10回以上

【必須経験】

1泊以上の泊まりの登山経験

【登山的特徴】

・宿泊を伴う登山を経験することで3級に昇格できる。小屋泊とテント泊は問わない。
・4級から3級へのステップアップは、特に女性にとって難易度が高いとされる。小屋の設備が整っていなかった時代は、小屋の不潔さが敬遠されていた。しかし近年は北アルプスを中心に女性に気を遣った清潔な小屋が多く整備され、泊まりのハードルは下がった。このため3級への昇級者がここ数年で急増した。
・登山回数が10回を超えても、泊まりの経験がない登山者は未来永劫3級には昇級できない。また、宿泊地は山中が原則のため、登山口付近のキャンプ場をベースとするタイプの登山は、取得要件を満たさない。
・日帰り登山で遭難し、余儀なくビバークを強いられ、山中で夜を明かし他場合、特例で3級に昇級できる。しかしこのタイプの3級保持者は以後の登山に足を運ばないケースが多い。

【特例事項】

・週に3回以上のボルダリングを5年間継続している者は3級を取得できる。
・トレランの大会に5回以上出場し、すべて完走することで3級を取得できる。

【装備的特徴】

・ノースフェイスをこよなく愛す登山者が多く見られる。これはノースフェイスの販売チャネルが多様なことと、品質と価格が中程度であることが遠因。実際にアウトドア用のノースフェイス製の商品は品質が優れている。しかしタウンユースでノースフェイスを着ると、芋臭さが際立ってしまう。それを回避するためにはパープルレーベルを着用するとよい。
・レインウェアをモンベルのストームクルーザーから新たに2着目を買い足すか迷っている者が散見される。
・装備品の購入は、首都圏では、石井スポーツ、好日山荘に加え、神保町のさかいやスポーツなど。
・3級への昇級とともに、トレッキングシューズポールを購入するパターンが多い。
・女性の登山者は四角氏が提唱したとされる、ショートパンツとタイツを組み合わせた格好を好む傾向にある。男性登山者もタイツスタイルが多い。

【登山的特徴】

・北アルプスの入門とされる燕岳や八ヶ岳などによく出かける。
・3級まではまだ友人などパーティで行動することが多い。
・テントを買うか迷っている登山者が多く、ハイシーズンの山小屋の混雑に辟易してテントを購入する登山者が増える。
・登山シーズンは春山から夏山、秋山まで。寒い時期は関東では奥多摩、丹沢、秋は紅葉がきれいな日光などに出かけることが多い。冬は雌伏の時とする者が多い。
・3級までの登山者に顕著なのは、まずは日本百名山やインターネットで人気の山に出かけるという発想の元、山選びを行うため、それが原因で週末や長い休みには人気の山にこぞって集まってしまう現象が多発する。ミーハー精神と情報化社会による価値の平板化として負の側面と指摘する声がある。他方、日本百名山の踏査はゲーム的楽しみがあり、登山の普及の一助となっていることを評価する声もある。

2級

【登山回数】

50回以上

【必須経験】

・ 2泊以上のテント泊山行
・火気を使用した自炊
・ソロ山行

【登山的特徴】

・夏は長期間のアルプス山行に出かける。7月中旬から9月初旬までの夏山シーズンは山にすべてを賭けている。週末のスケジュールは登山が中心である。
・よく出かける山域は北アルプス。特に、上高地を中心とした槍ヶ岳、蝶ヶ岳、常念岳などの山々や、雲ノ平、水晶岳、鷲羽岳、薬師岳などの裏銀座など、ポピュラーな場所を愛す。立山や白馬などにもよく出かける。また剱岳に登るかどうか逡巡し出すのがこの級の特徴的登山者。
・アルプスのシーズンが終わると、秋でも登ることができる百名山に登る登山者が多い。
・2級になると、ソロ登山を始めるようになる。これはパーティでの山行はスケジュールの調整や、山行中のペース配分など、他者に気を遣わなければならないことが多く、それを煩わしく思うようになるためである。逆に言えば、歩くペースや休むペース、幕営地での過ごし方から、就寝起床時間など、「山の生理」における自分の山行スタイルを確立するのが、2級取得者の特徴といえる。

【特例措置】

・1年に10回以上沢登りに出かけ、それを10年以上続けている者は2級を取得できる。

【装備的特徴】

・装備品やギアに病的にこだわるようになる。ザック、シューズ、レインウェアは言うに及ばず、ポール、クッカー、靴下、帽子、手袋、エイドキット、防寒着、ウインドブレーカー、シュラフ、テント、小型ランタンなど、重要な装備品から枝葉末節まですべての蓄財を投げ打ってでも山道具を買いそろえる。中には、登山に出かけることよりも、ショップや雑誌、ネットメディアなどでギアを眺める方が楽しくなってしまっている倒錯的登山者もいる。ガレージブランドという魔手にかかる登山者も増える。
・愛用しているテント泊用のザックは多種多様。グレゴリー、オスプレー、ノースフェイス、カリマーなどを使用している登山者が多い。UL系のブランドを好む者も多い。
・ウェアはアークテリクスにはまる者や、フーディニ、ノローナ、ピークパフォーマンスなど北欧系ブランド、先述のガレージブランドにこり出す者が増える。さらに近年はULハイカーの影響からか、より軽い装備品で山行に出かける者も、2級のより上級者に見られる傾向となっている。

1級

【登山回数】

100回以上

【必須経験・技能】

地図・天気図を読めること

【登山的特徴】

・1級には職業的登山者と、熱狂的登山者の2種がいる。前者は、登山などアウトドアを職業にしている者である。ショップ店員、メーカー勤め、ライター、イラストレーター、雑誌編集者、ウェブメディア関係者など。後者は山を中心に、人生設計を立てている者である。生業は山に関係のない職業ながら、登山シーズンに必ず山に入れるような柔軟な仕事や、休みを取りやすい職場で働いている者が多い。中には生活が苦しいながらも、清貧を極め、山に関する出費だけはいとわない者もいる。
・春から初冬まで登山を行う。冬山レベルではない、軽アイゼン着用の山に出かける。近年はトレイルランを行う登山者も増えてきている。
・基本的にはソロを好むが、職業的登山者は仕事の関係などで2人以上で山行に出かけるケースが多い。
・雑誌編集者は意外にも山行レベルが低い者が多い。またアウトドアライターの多くは、危険に対して鋭敏なので、無茶な山行は決して行わない。それより熱狂的登山者のほうが、己の技能を過信しており、危険な山行スタイルである場合が多い。
・必須技能とされている地図読みなどがきちんとできていない似非1級取得者が極めて多い。

【装備的特徴】

・職業的登山者は基本的に最新のトレンドを抑えたウェアを身にまとっている。ギアも高価で高機能なものを常に使用している。トレンドにおもねる部分があるものの、極力他のハイカーとかぶらないように気を遣っている者が多い。むろん職業柄自分の勤め先のブランドをよく身につけ、使用している。収入の多くをアウトドア道具に費やしている。熱狂的登山者の多くは収入が高くない。中にはアルバイトで生計を立てている者や、タクシー運転手など、低賃金の生活を余儀なくしている者も多い。しかし多くは山のためにそのような職業を、自発的に選択しているので幸福度は高い。経済的水準が低いため、ウェアは廉価品を纏っていることが多い。しかし機能性は抜群のものを使用し、目利きが利くためコスパに優れた装備の登山者が多い。

【特例措置】

海外の高所登山を10回以上経験しているものは1級を取得できる。

初段

【登山回数】

100回以上

【必須経験・技能】

5泊以上の山行経験

【登山的特徴】

・人生を山に賭けて、生活全般を捨てている。典型的な山男・山女で、山ですれ違うと異彩を放っている。同時に異臭も放っている。
・多くは高校、大学で山岳部に所属していた経験を持つ。社会人になってからも山岳会に入っている者が多い。
・ロッククライミングの経験があり、登攀スキルに秀でている。
・山の上で一人で酒宴を開催する人が多い。人格的にひねくれており、自然を超越しているような錯覚を抱き、他者に関して冷笑的な態度を取ってしまうことがある。そのため、人生の落伍者のような側面も垣間見える。しかし、一定程度の収入がある者が多い。意外に高所得の者が多い。時間と金に余裕がある。

2段

【登山回数】

300回以上

【必須経験・技能】

ピッケルなどを使った本格的な冬山登山

【登山的特徴】

・2段からは冬山登山経験が必須になる。冬山登山は敷居が高いため多くの登山者が2段に昇段できない。
・ 初段同様、高所得者が多い。大学教授や会社役員や有名企業に所属している者が多い。
・登山口までの移動は基本的に公共の交通機関を使う。電車賃やバス代、宿泊代には糸目をつけない。

【装備的特徴】

・とにかく高い装備品を身につけている。しかしなぜかモンベルを昔から愛用している者も多い。ほかには全身マムートの登山者も多い。

3段以上

【登山回数】

500回以上
職業的登山家(登山者ではない)

【登山的特徴】

・登山ガイド、自然ガイドの資格を有している。
・プロ登山家として生計を立てている。
・企業などからのスポンサードを得ている。
・勤め人ではない。
・海外での高所登山を行い、一般的にアルピニストと言われている本物の登山家。





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