書評『人を襲うクマ』、クマの襲撃をかわすために登山者がすべきたった一つのこと





近年のクマ襲撃事故を詳細に報告

近年クマによる人への襲撃が頻発しているという。
確かに、ニュースやSNSなどでもクマに襲われてけがを負ったというものや、クマの出没情報などを見かけることが多くなったような印象だ。
本書でも多くのクマによる襲撃事故が掲載されている。

第1章では有名な福岡大学ワンゲル部による「日高・カムイエクウチカウシ山のヒグマ襲撃事故」が掲載されている。生生しい被害者の手記など、読んでいて息が詰まるような緊迫感を感じた。
第2章は、最近クマが多く見られる秩父において長い間猟師をやってきた男性がクマの生態や歴史などを語る。
第3章がもっとも読みでがあるだろう。「近年のクマ襲撃事故」として5件の事故が報告されている。すなわち、2007年に起きた雪山でのクマ襲撃事故(千ノ倉山)、2009年の畳平駐車場襲撃事故(乗鞍岳)、2014年の休日の頂上直下での襲撃事故(川苔山)、同年の高島トレイルでの子連れクマ襲撃事故、2016年の山菜取りの連続襲撃事故(秋田)だ。
どれも、当事者の声を交え、詳細に報告されている。乗鞍岳の事故では、クマに殴られた男性が「その一撃で右目がぽろっと落っこちちゃって、上の歯もなくなりました」と証言。
クマの攻撃力の凄さが分かる。クマに襲われたら、無傷でいるのは難しい。

クマに襲われた時、人は無力なのか?

本書では第4章で「熊の生態と遭遇時の対処法」のパートを設け、クマの動物学的な分析や統計的な数値によるクマの出没や事故、人身事故増加の背景などを詳細に報告している。またクマ遭遇時の対処法も書かれている。
しかし、多くの類書と同様に、絶対的な撃退方法を提示しているわけではない。
まずは、クマに遭遇しないためにはどうすべきか、また不幸にも遭遇した場合、どうすれば死を免れられるかなどを記述している。
それでも、本書にはいくつか再確認すべき対処法が載っている。
たとえば、クマは首筋などの急所を狙って攻撃を仕掛けてくるので、興奮したクマが攻撃を仕掛けてきたら、腹ばいになって首筋を守るということは、覚えておいて損はないだろう。
クマの攻撃は多くの場合1分以内なので、クマ対人類の「1分間1本勝負」で喉笛を掻き切られなければ、引き分けながら、生き延びたという点で人類の勝利といえる。

また、クマは相手が老人や女などを、相対的に弱い相手とみて、攻撃を仕掛ける傾向があるという。不幸にも、読者がクマの攻撃対象になっている場合、ドモホルンリンクルなどのアンチエイジング対策やゴリマッチョの男装などが、対クマとの決戦において、効果的であると私は理解した。

絶対にクマに負けない方法

しかし、生存率をもっとも上げる方法は他にもある。
それは、山に近づかないことだ。クマの生活圏はおろか、最近は里山にも下りてくるクマが増加している。
さらには、人間の生活圏である街にもクマが侵入しているケースもある。
登山や山菜取りに加え、キャンプなどのアウトドア活動、さらには外出なども控え、土日は家に引きこもって静かに映画観賞や書見などをしていれば、決してクマの襲撃に会うことはない。

これからのアウトドア活動に絶対に必要なこと

私も、本書を読み、アウトドア活動を即刻中止した。
発売御すぐに購入、読了し、爾来、家に籠りっきりだ。
ウェアや登山靴、ギア類などはすべて売り払おうかと思案している。

春や秋は特にクマの目撃情報が増える。春は、冬眠明けで空腹のクマが食べ物を探しに、秋は冬眠に備え栄養補給をするためである。
しかし本書で紹介されている通り、冬山ですらクマの襲撃が起こりえる。
さらにクマの目撃情報は夏が一番多い。つまり、通年、どこにいてもクマ襲撃のリスクはあるということだ。

おそらく今後は、近所の銭湯や図書館、ファミレス、マクドナルド、国会議事堂、マージャン店、会議室、ボルダリングジムなどでも、クマに遭遇というケースが増えるだろう。

賢明な読者諸氏ならわかると思うが、クマは繁華街で肩がぶつかって、謝って済む相手ではない。土下座をしても金を出しても、おそらく頭部や首筋をめがけて攻撃を仕掛けてくるはずだ。信じられないくらいワイルドな奴なのだ。
慧眼な読者は私同様に、外出の自粛を検討すべきだろう。

本書『人を襲うクマ』が伝えたかったメッセージは、おそらくそういうことなのだと思う。
「家から出るな」
私はそう理解した。
まったく恐ろしい世の中になったものである。





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